Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

    “GWもお花見?”
 


先の冬が途轍もない豪雪に襲われたのは、
もしかしてそれの前兆だったのかと思わせるほど。
前代未聞の大きな災害に見舞われて。
被災地と呼ばれる地となった現地のみならず、
全国的に深い心痛に襲われ、落ち着けないまま迎えた春が、
それでも半ばを過ぎゆきて。
桜前線は北へと移り、
今からが見ごろとなる枝垂れ桜の角館や、
お城のお庭が桜で埋まる弘前、
春と初夏とが一度にやってくる北海道へ。
どうか遊びに来てくださいなと、
復興に頑張っておいでの皆様へのエールだろうか。
初日からして良いお日和となったのが、
今年のゴールデンウィークであったりし。

  ……だというのに

 「…ル〜イ〜、まだ起きられねぇのか?」
 「ん〜〜。」

カーテンも引いたままの次男坊のお部屋を戸口からのぞき込み、
隠れんぼの“もういいかい”よろしく、
無邪気なお声掛けをしている小さな坊やへ。
あらまあと微笑ましげに微笑ってしまうお手伝いさんが、
時折 通過してゆく此処は、
歴代の家長が都議を務め続けておいでの葉柱氏ご一家の住まう本宅で。
寝ぼけ半分なお返事に、むむうと膨れての突撃を敢行したか、
ばったんと扉が閉じてしまったその後には、
お廊下に坊やの姿もなくなっており。

  まあまあ相変わらずに仲のおよろしいことですね。
  本当に。
  ルイ坊っちゃまって子供好きだったんですねぇ。
  …それは どうだったかしらね。

そんなやりとりがメイドさんたちの詰め所で交わされてののち、

 「あんな可愛いらしい坊やが懐いて来たのなら、
  そうでなくたって主旨変えしちゃいますってvv」

そういう結論が出るのも、まま いつものことではあったれど。
(笑)

 「る〜い〜。もう8時だぞ、どっか出掛けようよ。」
 「ん〜〜〜。」

そりゃあ広々とした洋間の窓際、
重厚な作りの木製の枠にマットが収まっているタイプの寝台には、
声こそするものの、微動だにしないままの、
羽布団をまとった なだらかな尾根が横たわっており。
体格がよろしいからだろう、
そういうことが掛け布越しにも判る身の、
スポーツマンの次男坊様。
アメフトとバイクに傾倒している、
青春真っ只中なことのその余波で。
昨夜も実はお忙しかったらしくって……。

 「なあなあ、さくら見に行こうって。」
 「ん〜? 此処いらのは、もう終わってんだろが。」

やっとまともなお言葉が返って来たのへ、
判りやすくも口許ほころばせた、金髪金眸の小柄な坊や。
半袖と長袖のTシャツを重ね着し、
ボトムは、鈍銀の鋲が打たれた微妙に渋めのダメージジーンズという、
この子にしては随分と大人しくも地味ないでたちのまま、
たたたっと寝台まで駆け寄って来て、
えいやっと掛け布の端っこをめくると、
その中へどんどんと潜り込んでく果敢さよ。
さすがにそうまでされると、
布団をかぶってもいられぬか。
むくりとお顔を外へ出し、
続いてやっぱり掛け布の襟元から顔を出した坊やへ向かって、
やっとの真っ当なお声を掛ける。

 「…………な〜にしとるか、お前はよ。」
 「まだ寝てるんなら、付き合おうと思って。」

だって俺も昨夜は忙しかったしぃと、
悪びれもせずに言い放った子悪魔さんのお言いようへ、

 「〜〜〜〜。」

ついて来ただけで何が忙しかったというのだと訊きかけて、だが、
何だかおっかないお答えが返って来そうな予感がし。
口許をへの字に曲げたお兄さんへ、
やっぱり“うくくvv”と意味深に微笑うばかりの、
お子ちゃま悪魔様だったのだけれども………。



アメフトと同じくらいに、いまだにオートバイや車も大好きで。
いろいろカスタマイズするのも手間と工夫が楽しいし、
風を切ってその走行を楽しむのも、勿論のことお気に入り。
マフラーなぞへ改造を施し、
必要のないほどやかましいイグゾーストノイズを立てるのは、
あいにくと趣味じゃあないが、
そういうのの重厚な轟きをその身へ感じることこそ、
途轍もない快感だという連中もいるらしいのも、
まましょうがないかと思わんではない。
機動力の大きいマシンほどそういう途轍もない爆音を立てもする。
そんなの本当には牛耳れないからと、
せめて音だけでも真似したいという願望なのなら、
何とはなく理解できなくもないからで。
ただまあ、
世間を騒がせて注目浴びたい、
子鼠みたいな小市民を嘲笑したいというクチの、
大きなのっぽの勘違いをしている馬鹿どもは、
如何ともし難いと思いもするし。
徒党も組まずの、
ただただバイク走行の爽快感を味わいたいだけなライダーたちへも、
要らない誤解を招くよな、
はた迷惑しかやんない連中へは、
引退してもなお、その眸を配っておいでの、
元・カメレオンズという族のおかしら。

 『俺らのバックにゃあ、都議とパイプのあるOBだっているってんだ。
  何処の誰が逆らえようかよなぁ。』

葉柱ルイさんがヘッドから引いて三代目くらいとなるのだろ、
今年の新顔の面々が、
いい気になってかそんな戯言
(たわごと)
周囲へ聞こえよがしに撒き散らかしてたのが、
昨夜のとある炉端焼き屋の広間の一角でのお話で。
そういう輩には、怖がって近づかなくなる存在と入れ替わり、
微妙にフレンドりーな構えになって、
年上の、しかも随分と羽振りの良さそうな、
どこかの遊び人風の輩がつきまといもするもの。
何かあったときには声かけてくれだとか、美味い話を振っておき、
兵隊や身代わり、はたまた斥候役の鉄砲弾に仕立てた…なんてのは、
さすがに前時代の任侠さんたちの世界の話だが。
今時では物騒な代物の売買を手伝わされたり、
外泊しても周囲に怪しまれないような素性の少女らを、
どっかから拾って来いと言われる羽目となったり、と。
そういう手先にされかねないというまでの想像力は沸かないらしいから、

 『いっそ放っておくか、
  わざとにそういう顔を近づけるよう、煽りつけてやりゃいんじゃね?』

痛い目見させる方が手っ取り早いなんて、
そんなおっかないことを平然と言い出す小さな坊やへ。
馬鹿言ってんじゃねと、
どっかの大リーグのらしいつばつき帽をかぶせ、
ぐいと そのつば引き降ろした大きな手が、
あんな下っだらねぇ連中のためを思って動くのが、
それこそ勿体ねぇなと思ったからなのにね。
鳥や豚をあぶる良い匂いやら、
少々呂律の怪しい声が飛び交う、大はやりの炉端屋の。
こちらはカウンター席に陣取っていたお歴々のうち、

 『気持ちは判かっから、此処で大人しく待ってな。』

今も大学のアメフト部で一緒に行動中の、
元総長の左右を護りし双璧、ツンさんとギンさんとが出てったその後から。
やはりアメフト部の何人か、
標的にしていた若いのへと近づくと、
“久し振りだな”と先輩風吹かせて立ち上がらせて、
やはりお外へ連れ出してった。
その後へと、
堂々の大トリとってのご出陣となって出てった葉柱であり。
何やら説教みたいなことを言い聞かせてやるんだろうけど、

 “自分らが今の天下取ってる気でいるよな奴に、
  OBが何言っても、なかなか聞こえない時期じゃあないのかなぁ。”

20本限定のコーチンの炙りとカシスソーダをいただきながら、
そんなような子供離れしたことを思ってた妖一坊やだったのは、
決して物の道理や理屈だけで断じて言ってるんじゃあなくて。
実をいや、結構 怖もての筋の方にも伝手をお持ちの坊やなだけに、
そこで起きたらしい“けじめ”とか“掟”が絡む色々な顛末、
覗き見したこともあったから。
なので、

 “まあ、警察沙汰になりそなことをしでかしやがったら、
  こっちにまで火の粉が来ないように、
  それこそ○○の親分に言い付けてやるんだけどもな。”

なんてな恐ろしいことを思いつつも、
表向きにはその小さな胸へと秘めといて。
翌朝の寝室にて、甘え声にて総長さんへじゃれつく可愛ゆさよ。
マグロのように寝こけてるお兄さんをゆさゆさと揺すぶりながら、

 「なあなあ、さくら。」
 「だ〜から。此処いらのは終わったろうって。」
 「違げぇもん。丘の上公苑のシバザクラが満開なんだもん。」
 「あ〜〜〜? ウバザクラだぁ?」

  ………ルイ、
  そういうのは昭和の年代じゃないと通じないおやじギャグだぞ?

  うっせぇな、そんくらい頭回ってねぇんだよ。//////
←あ(笑)

その割には、
なかなかテンポのいい合いの手を打ち通している坊ちゃまであり。
しょうがねぇなと雄々しい上背むくりと起こし、
起き出してくれるまで、あとどのくらいかかるやら。
このプロセスもまた、実は楽しい、
そんな おませな小悪魔くんだったのでありました。


   ちょっぴり風の冷たい中ですが、
   いよいよのGWの始まりです。
   どちら様もご自愛忘れず、どうか楽しんで来てね?





   〜Fine〜  11.04.29.


  *一応はルイさんの顔を立てておき、
   その実、問題の顔触れのデータをしっかと頭へたたき込み、
   何かあったらとの準備を臨界態勢にて立てておく。
   これもまた“内助の功”なんでしょうかね。(ちょっと違うぞ)
   相変わらずのハイパー小学生チビルマくんですが、
   甘えるときの愛らしさは生まれたての仔猫も顔負けの甘やかさ。
   これを詐欺と言わずして何と言うと、
   結局はかつぎ出された総長さん、
   ぶうたれつつ思うのもいつものことだそうでございます。
   どうかしゃっきり目ぇ覚まして、安全運転してってね。
(笑)

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